はじめに

均質化された味と地域文化の味
日本各地にはその土地の味というものがあります。
お茶の場合にも、土地の品種や独自の製茶技術を持ち、地域の歴史と風土に育まれた多様な味覚があるものです。
その一方で、一般に流通購買されるお茶のほとんどは、栽培するメーカーと製品化する製茶メーカーに分業化され、均質化されたメーカー主導型の味になっています。
しかし、極めて少数ではありますが、農家が有機栽培で製茶までを一貫生産する安全な自園自家栽培の自家製造茶が息づいています。一園一園の土質や気象気候に適した茶樹品種と、園主園主の有機栽培の方法と、年々の茶葉の育成状態をおいしく生かす製茶方法により、さまざまな香りと豊かな味わいを楽しむことのできる安全な逸品茶です。
大手による流通の独占、味の均質化は「味の多様性」や「地域の味」を消失させています。
この問題はお茶だけでなく、地元の米や麦や豆を原料にする町や村の豆腐屋さん、味噌、醤油、地酒、お菓子、料理屋さんなど、加工食品全般においても共通される問題です。
ここで考えたいのは安全な食べ物の地域自給に基づく地域経済の持続です。さらには、このリージョナルアイデンティティー(地域に視点を据えた暮らし方、考え方といった価値観)が国境を越えて共生のネットワーキングが必要なのではと考えます。


自園茶とテロワール
テロワールという言葉が表現する意味合いは
「局地的気候、地形、脂質土壌などの自然要件と人と暮らしを含む複合的な地域性」と、かなり広い範囲にあり、ワインの世界ではさらに広く、深く、時間軸をも擁し、その土地の歴史文化を含む空間を指すようです。
テロワールを構成する個々の要素を見ていくことによって、食べ物の評価の多様性と安全性の根源的な理解をする手助けとなり、それはあらゆる文化にテロワールを感じる事ができます。日本の有機自園茶は、まさにテロワールが生きたお茶と言えます。

このようなお茶の存在意義はスローフード協会の趣旨と重なり、日本の有機自園茶を世界にPRするきっかけが生まれました。一園逸茶運動は、茶農家が主体となり日本の伝統食文化であるお茶を農産現場からPRして参ります。


一園逸茶代表世話人 木原義行
掲載記事:木原氏紹介/Megumi富士山がくれたもの(ビジネスVEGA別冊)

 

一園逸茶のあゆみ

2005年 春 スローフード協会国際理事の茶園視察
らでぃっしゅぼーやの生産者団体Radixの会のコーディネートにより、イタリアスローフード協会国際理事(ジャコモ・モヨーリ氏)が静岡有機茶農家の会を視察。

ジャコモ氏の見解
●日本各地にそれぞれお茶栽培があり、それぞれが地域との関わりにおいて多様。
●茶畑と人を特定できるお茶は、味わいにおいてもその土の味覚を象徴できる素材であり「土地の記憶」として探究し、その価値を高めていく可能性を有している。
●多様であるはずのお茶の栽培、加工が分業化され、現代では均質化されたものになり、その生産過程が農薬や化学肥料の多使用に進行し、結果安全性の低下、環境汚染の進行として表面化している。
●このような状況うを解決する手法として、有機栽培で畑ごとの味わいの追求が可能な自園自家製茶の農家の存在を、国内外に広く認知してもらう行動を起こすべき。これはスローフード協会の活動目標にもなる得るテーマである。
2005年 10月 スローフード世界大会に招聘される
モヨーリ氏再来日。
「来年10月にイタリア・トリノで開催されるスローフード世界大会のでのテーマ発表で、日本の有機自園茶の取り組みを世界に紹介したい。」と、テッラ・マードレ(世界生産者会議)およびサローネ・デル・グスト(食の祭典)への参加要請を受け、招聘される。
これをきっかけに、一園逸茶運動が企画される。
2006年 一園逸茶運動のスタート/呼びかけ賛同人会開催
国内の食農のエキスパートの皆様の賛同を得て「一園逸茶運動~日本の有機自園茶を広めよう~」が企画される。

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呼びかけ世話人
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ジャコモ・モヨーリ氏(スローフード協会国際理事)
木原義行(元らでぃっしゅぼーや代表)
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呼びかけ賛同人(2005年現在)
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若生裕俊(スローフードジャパン会長)
島村菜津(ノンフィクション作家)
緒方大助(らでぃっしゅぼーや代表)
塩川恭子(食の学校主宰)
養父信夫(九州のムラ編集長)
甲斐良治(現代農業増刊号編集主幹)
冬木れい(料理研究家)
伊東由美子(料理通信副編集長)
河野和義(八木澤商店)
静岡有機茶農家の会、 他
全国の有機自園茶農家に呼びかけを行いネットワークづくりスタート。

掲載記事:Radixの会ニュースレター
横浜スローフードフェア2006に参加
日本の有機自園茶を知ってもらうためのセミナー開催。

司会進行:島村菜津(ノンフィクション作家)
講師:木原義行(一園逸茶代表世話人)
有機茶セミナー:静岡有機茶農家の会

 掲載記事:日刊工業新聞 
2006年10/25~30 イタリアスローフード世界大会参加

テッラ・マードレ(世界生産者会議)
■ワークショップ
日本の有機自園茶の存在とその取組みを発表。
日本茶の中でもスローフードな有機自園茶。この発表で、日本の有機自園茶の存在が世界的に明らかになりました。
JIENCHAという言葉もここから発信されました。
■特別なお茶会開催
美食家らに煎茶と玉露を本格的にふるまい絶賛される。
ゲストはスローフード国際理事、ガンベロロッソ、イタリア伝説のシェフ、ソルボンヌ大学教授(日本文化専門)、他。



サローネ・デルグスト(食の祭典)
■日本茶のテイストワークショップ担当
タイトル:四季の煎茶
5種類のお茶のテイスティング&茶菓子付きセミナー。

記事掲載:らでぃっしゅぼーや/おはなしSalada
記事掲載:Radixの会ニュースレター46
2007~2008年 一園逸茶イベント(もろもろ)

トスカーナスローフードイベント協力
東京・大手町カフェにてお茶会
茶農家交流会  他

 
 2008年  一園逸茶・有機茶の栽培技術勉強会スタート
第1回
2008年11月1日(土)2日(火)開催
日本の有機自園茶をPRしていくにあたり最も重要なことは、その品質です。
一園逸茶事務局では全国70軒程の有機系茶園に呼びかけ勉強会を企画。14茶園の有志が集い、有機茶の栽培技術勉強会がスタートしました。
勉強会の様子はコチラ